参議院比例区(さんぎいんひれいく)は、日本の参議院議員通常選挙における比例代表制で選出される選挙を区分するための通称である。

参議院の比例代表では、有権者は投票用紙に支持政党(政党名)か候補者名(個人名)のどちらかを書いて投票する。任期は6年100議席あり、3年ごと改選される議席数は50である。政党名と個人名の票の合計が「各党の得票数」となり、それにに応じて「ドント式」計算方法で議席が配分される。参議院選挙の「比例区」は衆議院選挙の「比例区」とは異なり、比例代表の候補者名簿順位のない非拘束名簿式であるため、各党の獲得議席のなかで個人名を書かれた得票が多い候補者順に当選者が決まる。

「比例区」と表いう名称の選挙区は存在しないが、前身の「全国区」のような正式名称がないために、マスコミや政党をはじめ広く一般的に使用されている通称表現である。

推移

参院全国区制時代

第12回参議院議員通常選挙まで行われていた全国区制の選挙では非常に選挙費用・体力が必要になる問題があった。選挙費用が多額かかるため金権選挙になること、選挙区が広すぎることで全国行脚による選挙活動による疲労で選挙戦中又は当選確定直後に倒れて死亡した候補者が発生したことから「残酷区」と言われた。また、全国を飛び回る交通費など選挙費用も膨大であったため「銭酷区(ぜにこくく)」とも呼ばれていた。

参院比例代表制制度の導入

  • 1983年(昭和58年)第13回参議院議員通常選挙から厳正拘束名簿式の比例代表制が導入された。
  • 1995年に友部達夫は細川護煕の側近であった初村謙一郎の政治団体関係者に政官工作資金として巨額の金を渡し、新進の参院比例区の高い名簿順位を獲得し、7月の第17回参議院議員通常選挙に当選した。1997年にオレンジ共済組合事件が発覚し、逮捕許諾決議案が可決され、詐欺容疑で逮捕された。

非拘束名簿式への変更後

  • 2001年(平成13年)第19回参議院議員通常選挙から参議院比例区 非拘束名簿式に変更され、有権者は「政党名」又は「候補者名」で投票可能となった。非拘束名簿式では、衆院選の比例制度とは異なり、当選順位は「個人名での得票数の多さ」で決まる(2019年参院選以降は特定枠という例外制度が導入された)。
    • 非拘束名簿式化で金で名簿順を買うことは不可能になった代わりに、全国で50の当選枠を狙う候補者にとっては、有権者からどれだけ多く「候補者名」での得票を集められるかが重要になった。候補者目線で「政党名」よりも「個人名」での得票が当落を大きく左右するため、全国的に見ても規模が大きい職能団体や業界団体などの利益団体の組織内候補や全国的な知名度が高い芸能人やスポーツ選手などの著名人(タレント候補)が当選しやすい制度である。
  • 2016年の選挙から「鳥取県と島根県」、「徳島県と高知県」が、それぞれ一つの選挙区となる、「合区」が開始された。
  • 2019年(令和元年)第25回参議院議員通常選挙から 合区問題のために政党が優先的に当選人となるべき候補者を特定枠として任意に指定できるようにったた。従来の非拘束名簿方式を中心とした制度に拘束名簿式が混合する形となる。「合区」された「鳥取県と島根県」「徳島県と高知県」の選挙区で候補を擁立できない方の県の候補者を、この特定枠から擁立する形が取られた。

定数

以下の定数は一回の選挙ごとの比例区の定数である。参議院の場合、3年ごとに半数を改選する制度となっているため、総議席数に占める比例区選出議員の定数は以下の定数の二倍となる。

  • 1983年(昭和58年) - 1998年(平成10年): 50
  • 2001年(平成13年) - 2016年(平成28年) : 48
  • 2019年(令和元年) - 現在 :50

選挙結果

第26回(2022年)

  • 熊野正士の辞職により宮崎勝が繰り上げ当選(2022年10月7日)。
  • 水道橋博士の辞職により大島九州男が繰り上げ当選(2023年1月16日)。
  • ガーシーの参議院議員除名処分により齊藤健一郎が繰り上げ当選(2023年3月24日)。
  • 田村智子の第50回衆議院議員総選挙立候補(当選)に伴う失職により大門実紀史が繰り上げ当選(2024年10月22日)。
  • 足立敏之の死去により小川克巳が繰り上げ当選(2025年1月17日)。
次点者

第25回(2019年)

この選挙より非拘束名簿式(特定枠設置)に変更、定数2増
  • 立花孝志の参議院埼玉県選挙区補欠選挙立候補(落選)に伴う失職により浜田聡が繰り上げ当選(2019年10月23日)。
  • 北村経夫の参議院山口県選挙区補欠選挙立候補(当選)に伴う失職により比嘉奈津美が繰り上げ当選(2021年10月21日)。
  • 宮本周司の参議院石川県選挙区補欠選挙立候補(当選)に伴う失職により中田宏が繰り上げ当選(2022年4月15日)。
  • 三木亨の辞職より田中昌史が繰り上げ当選(2023年1月18日)。
  • 吉田忠智の辞職により大椿裕子が繰り上げ当選(2023年4月6日)。
  • 室井邦彦の死去により藤巻健史が繰り上げ当選(2024年1月18日)。
  • 須藤元気の衆議院東京15区補欠選挙立候補(落選)に伴う失職により市井紗耶香が繰り上げ当選(2024年4月26日)。
  • 市井紗耶香の辞職により奥村政佳が繰り上げ当選(2024年5月13日)。
  • 山本香苗の第50回衆議院議員総選挙立候補(落選)に伴う失職により高橋次郎が繰り上げ当選(2024年10月22日)。
  • 梅村聡の第50回衆議院議員総選挙立候補(当選)に伴う失職により山口和之が繰り上げ当選(2024年10月22日)。
次点者

第24回(2016年)

  • 長沢広明の辞職により竹内真二が繰り上げ当選(2017年10月13日)。
  • 髙階恵美子の第49回衆議院議員総選挙立候補(当選)に伴う失職により竹内功が繰り上げ当選(2021年10月29日)。
  • 藤末健三の辞職により田城郁が繰り上げ当選(2022年6月27日)。

第23回(2013年)

  • 渡辺美知太郎は2019年4月12日、井上義行は2019年6月25日にそれぞれ参議院議員を辞職したが、2014年11月にみんなの党が解党された際に比例名簿を取り下げたため、繰り上げ当選は行われず任期満了まで欠員となった。

第22回(2010年)

  • 上野宏史の第46回衆議院議員総選挙立候補(当選)に伴う失職により真山勇一が繰り上げ当選(2012年12月14日)。
  • 小熊慎司の第46回衆議院議員総選挙立候補(当選)に伴う失職により藤巻幸夫が繰り上げ当選(2012年12月14日)。
  • 桜内文城の第46回衆議院議員総選挙立候補(当選)に伴う失職により山田太郎が繰り上げ当選(2012年12月14日)。
  • 中村博彦の死去により堀内恒夫が繰り上げ当選(2013年8月6日)。
  • 藤巻幸夫の死去により田中茂が繰り上げ当選(2014年4月1日)。
  • 佐藤ゆかりの辞職により阿達雅志が繰り上げ当選(2014年12月4日)。

第21回(2007年)

  • 山本孝史の死去により大石尚子が繰り上げ当選(2007年12月28日)。
  • 遠山清彦の辞職により草川昭三が繰り上げ当選(2008年9月12日)。
  • 青木愛の第45回衆議院議員総選挙立候補(当選)に伴う失職により広野允士が繰り上げ当選(2009年8月22日)。
  • 田中康夫の第45回衆議院議員総選挙立候補(当選)に伴う失職により平山誠が繰り上げ当選(2009年8月31日)。
  • 西岡武夫の死去によりはたともこが繰り上げ当選(2011年11月10日)。
  • 大石尚子の死去により玉置一弥が繰り上げ当選(2012年1月17日)。
  • 今野東の第46回衆議院議員総選挙立候補(落選)に伴う失職により樽井良和が繰り上げ当選(2012年12月14日)。
  • 義家弘介の辞職により武見敬三が繰り上げ当選(2012年12月14日)。
  • 室井邦彦の辞職により尾辻かな子が繰り上げ当選(2013年5月23日)。
  • 大江康弘の辞職により山村明嗣が繰り上げ当選(2013年6月5日)。

第20回(2004年)

  • 竹中平蔵の辞職により神取忍が繰り上げ当選(2006年10月4日)。

第19回(2001年)

この選挙より非拘束名簿式に変更、定数2減
  • 高祖憲治の辞職により中島啓雄が繰り上げ当選(2001年10月3日)。
  • 大橋巨泉の辞職によりツルネン・マルテイが繰り上げ当選(2002年2月8日)。
  • 田嶋陽子の神奈川県知事選挙に立候補(落選)に伴う失職により田英夫が繰り上げ当選(2003年4月8日)。
  • 筆坂秀世の辞職により小林美恵子が繰り上げ当選(2003年7月7日)。
  • 近藤剛の辞職により藤野公孝が繰り上げ当選(2003年11月26日)。

第18回(1998年)

  • 岡利定の死去により清水達雄が繰り上げ当選(2000年10月12日)。
  • 立木洋の辞職により大門実紀史が繰り上げ当選(2001年1月5日)。
  • 村上正邦の辞職により宮崎秀樹が繰り上げ当選(2001年3月6日)。
  • 今井澄の死去により信田邦雄が繰り上げ当選(2002年9月2日)。
  • 小宮山洋子の東京6区補欠選挙に立候補(当選)に伴う失職により中島章夫が繰り上げ当選(2003年4月23日)。
  • 沢たまきの死去により千葉国男が繰り上げ当選(2003年8月22日)。
  • 江本孟紀の大阪府知事選挙に立候補(落選)に伴う失職により樋口俊一が繰り上げ当選(2004年4月23日)。

第17回(1995年)

  • 木暮山人の死去により松崎俊久が繰り上げ当選(1998年6月)。
  • 石川弘の死去により中島啓雄が繰り上げ当選(1999年10月)。
  • 小山孝雄の辞職により柳川覚治が繰り上げ当選(2001年2月)。
  • 堂本暁子の千葉県知事選挙に立候補(当選)に伴う失職により黒岩秩子が繰り上げ当選(2001年3月)。
  • 友部達夫の失職により金石清禅が繰り上げ当選(2001年6月)。

第16回(1992年)

  • 藤江弘一の死去により宮崎秀樹が繰り上げ当選(1993年6月23日)。
  • 細川護熙の第40回衆議院議員総選挙に立候補(当選)に伴う失職により小島慶三が繰り上げ当選(1993年7月16日)。
  • 小池百合子の第40回衆議院議員総選挙に立候補(当選)に伴う失職により円より子が繰り上げ当選(1993年7月16日)。
  • 松本英一の死去により萱野茂が繰り上げ当選(1994年8月5日)。
  • 青島幸男の東京都知事選挙に立候補(当選)に伴う失職により山田俊昭が繰り上げ当選(1995年4月11日)。
  • 田辺哲夫の死去により山東昭子が繰り上げ当選(1995年8月25日)。
  • 山東昭子の第41回衆議院議員総選挙に立候補(落選)に伴う失職により嶋崎均が繰り上げ当選(1996年10月9日)。
  • 嶋崎均の死去により長尾立子が繰り上げ当選(1997年5月19日)。

第15回(1989年)

  • 横溝克己の死去により星野朋市が繰り上げ当選(1990年3月14日)。
  • 山岡賢次の第40回衆議院議員総選挙に立候補(当選)に伴う失職により扇千景が繰り上げ当選(1993年7月16日)。
  • 石川弘の辞職増岡康治が繰り上げ当選(1994年3月23日)。

第14回(1986年)

  • 青島幸男の辞職によりいずみたくが繰り上げ当選(1989年6月16日)。
  • 塩出啓典の第39回衆議院議員総選挙に立候補(落選)に伴う失職により針生雄吉が繰り上げ当選(1990年2月23日)。
  • 宮田輝の死去により山口光一が繰り上げ当選(1990年8月20日)。
  • いずみたくの死去により山田俊昭が繰り上げ当選(1992年5月25日)。

第13回(1983年)

この選挙より拘束名簿式比例代表制を導入
  • 野坂昭如の第37回衆議院議員総選挙に立候補(落選)に伴う失職によりコロムビア・トップが繰り上げ当選(1983年12月24日)。
  • 竹内潔の死去により石井道子が繰り上げ当選(1984年9月4日)。
  • 藤井裕久の辞職寺内弘子が繰り上げ当選(1986年6月23日)。

主要政党別得票数

拘束名簿式

非拘束名簿式

非拘束名簿式(特定枠設置)

脚注

注釈

出典

関連項目

  • 全国区制-1983年に廃止
  • 職能代表制- 選挙人を各職域に分け、職域を単位として代表者を選任する方法であり、地域代表制という「 一定の地域を基礎単位として代表者を選出」することに対比る概念
  • 厳正拘束名簿式 -政党が選挙前に決めた名簿順に得票数に応じて政党の当選者が決まる方式
  • 非拘束名簿式
  • 拘束名簿式- 特定枠

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