国民統一政府(こくみんとういつせいふ、ビルマ語: အမျိုးသားညီညွတ်ရေး အစိုးရ、ビルマ語発音: [ʔəmjód̪á ɲìɲʊʔjé ʔəsója̰] アミョーダーニーニュッイェー・アソーヤ; 英語: National Unity Government of Myanmar; 略称: NUG)は、2021年ミャンマークーデターを起こしたミャンマー国軍に対抗して民主派勢力が樹立した、ミャンマー連邦共和国の合法的な政府であると主張する機関である。
概要
2021年2月1日に発生した軍事クーデターに対抗し、2021年4月16日に連邦議会代表委員会(CRPH)によって樹立。アウンサンスーチー国家顧問とウィンミン大統領の役職は据え置かれたが、2人とも拘束中であるため、副大統領のドゥワ・ラシ・ラーが大統領代行を務めている。結成直後の5月、国家行政評議会はNUGをテロ組織に指定した。
閣僚はNLDの中堅議員を中心に構成されていたが、副大統領、首相以下、大臣・副大臣の半数が少数民族出身者で、女性、若者、LGBTなどの幹部もいて、少数派に配慮している様子が窺えた。ただNUGのメンバーのほとんどは国内の少数民族武装勢力の支配地域で身を隠しているか国外亡命中であり、ズームなどを利用して閣僚会議などを行っている。
2022年4月時点で7カ国に代表事務所を置き(日本、イギリス、オーストラリア、大韓民国など)、国際連合本部と東南アジア諸国連合(ASEAN)本部に駐在員を派遣している。2022年2月には日本支部が設置され、代表にはカレン族のソー・バ・フラ・テイン氏が就任した。
歴史
宣戦布告宣言
2021年9月7日、NUG大統領代行・ドゥワ・ラシ・ラーは、国軍に対して宣戦布告を宣言し、各PDF・少数民族武装勢力に一斉蜂起を呼びかけた。もっとも既にPDFは武力闘争を開始していたので、これを事後承認した形であり、わざわざ宣戦布告した理由について、NUG外相のジンマーアウンは「外交努力が失敗するなかで国内の抵抗に勢いをつけるため」と答えている。
宣戦布告文の内容は以下のようなものである。
- NUGは、本日9月7日付けで、ミャンマー全土において独裁軍と戦うことを決めた。全国民は様々な方法、方向で戦いに参加せよ。
- PDFは自分の地区のミンアウンライン軍とその仲間を倒せ。
- 区域管理者は今すぐ職場を離れよ。
- PDFはNUGの命令に従い、国民第一に、優先順位を守ること。
- 公安部隊は国民の安全確保を計画的に行うこと。
- 全国民は、本日から自分の安全な居場所を離れないこと。必要なものは身に離さず集めておくこと。またPDFを手伝うこと。
- 少数民族武装勢力はミンアウンライン軍を様々な方向から攻めること。また自分の地域は自分達で守ること。
- 軍の全ての管理体制に対して、全国民が全力で戦うこと。
- 国境警備隊と民兵も敵と戦うこと。
- 私たちの戦いは正義である。
- 国連や近隣の国々も状況を理解してくれると信じる。
- ミンアウンライン軍の兵隊は、PDFと連帯して戦うこと。
- 本日からすべての公務員は仕事へ行かないこと。
民主派のリーダーだったスーチーは、非暴力不服従をポリシーとしていたので、これは大きな方針転換だった。これに対してスーチーは裁判の法廷や面会の際に「国民は団結し、話し合いにより問題を解決してほしい」「世界人権宣言の最後の条文に自分のメッセージがある」と述べたと伝えられている。世界人権宣言の最後の条文とは、第30条「この宣言のいかなる規定も、いずれかの国、集団又は個人に対して、この宣言に掲げる権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を行う権利を認めるものと解釈してはならない」である。
この宣戦布告宣言に対する評価は賛否両論で、「国土の荒廃が進む」という反対の声も大きく、カレン民族同盟(KNU)のドゥープラヤ地区議長は、「戦争になっても人々には食糧も避難所もない」と宣戦布告宣言の撤回を求める請願書を送った(ただし、KNU中央委員会の関係者によるとドゥープラヤ地区議長個人の意見であり、中央執行委員会の意見を代表するものではないとしている)。また日本・ミャンマー友好議員連盟会長で自民党所属の衆議院議員・逢沢一郎は、X上で「力の差は明らかだ。国軍に弾圧の口実を与えてしまう。流血の惨事が心配だ」と懸念を表明した。はたしてこれを機にPDFによる行政官、公務員、USDP関係者、国軍の密告者の疑いをかけた者などに対する暗殺事件が激増し始め、人々は国軍のみならず、民主派に国軍派のレッテルを貼られ、暗殺の対象になることも恐れなければならなくなり、社会の分断と閉塞感はいっそう進んだ。
宣戦布告宣言をしたものの、NUGは国土を実効支配しておらず、資金も不足しているため、公共サービスの提供も、治安維持もできておらず、制定した法律が実行されることもなく、求心力の低下が指摘されている。指揮系統が不明確であるため、意見調整にも難渋しており、ときおり閣僚交代の声が上がるものの、様々な人脈・金脈をNUG閣僚が属人的に有していることから、それにも困難なのだという。2024年4月には、国民統一顧問評議会(NUCC)の第2回大会が開催されたが、出席者からはNUGの中国を重視する方針、国家分裂を招く少数民族武装勢力との共闘について批判が噴出し、大会最終日にはNUGとCRPHの代表者が欠席する事態となった。またNUCCに対しても①実力のある少数民族武装勢力が参加していない②提案は非現実的で、優先順位も実施時期も示されていない③国民に存在が知られていないという批判が上がっている。
CDM(市民不服従運動)
NUGは公務員、教師、医師などにCDM(市民不服従運動)を推奨している。具体的には職務を放棄して、軍事政権の行政機能を麻痺させることが目的とされる。
しかしNUGのCDM従事者に対する生活支援・経済支援は不十分で、彼らの大半は生活に困窮している。また学校CDMは、教師だけではなく生徒にも及んで、軍事政権下の学校への登校を止める動きもあり、将来の学力低下が懸念される他、特に大学のCDMは、過去に大学が反政府運動の拠点になったことを考えれば、民主派にとっても悪手だという批判もある。また医療CDMは、病院の深刻な人手不足を招き、優先的に治療を受けるための賄賂が横行し、貧困層の人々が適切な治療を受けられていないと指摘されている。
NUGはCDM不参加者を処罰する方針を示しているが、これは彼らの家庭事情や経済的苦難を顧みない暴挙であると批判され、PDFによるCDM不参加者の殺害事件も頻発しているが、NUGはこれにも対処できていない。
独自の教育制度
NUGは、CDMに参加した生徒のために、そして軍事政権下の学校の軍事奴隷教育を排すことを目的として、独自のオンラインの学校・大学を開設したり、紛争地帯や難民キャンプに学校を建設・建設の支援をしている。教鞭を執っているのはCDMに参加した教師たちである。教育内容も従来の暗記偏重ではなく、思考力、洞察力、理解力、創造力、問題解決力を重視したものなのだという。2022年6月のNUGの発表によると、NUGが開設したオンラインの学校と現場で対面教育をしている学校には、生徒が151,303人、教師が16,628人となっている。
しかし、資金や教材が決定的に不足していたり、教師の給与が支払われていなかったり、国軍がインターネットを切断しているためにオンラインの授業を受けられなかったりという問題点も指摘されている。そもそもNUGの学校を卒業してもヤンゴン、マンダレーなどの軍事政権下の地域では就職先が見つからないという根本的な問題もある。
またオンラインの学校から個人情報が漏れて、教師や生徒たちが国軍に追われる身になったり、授業料の違法徴収、学校基金の横領などの不祥事も生じている。2023年2月にはNUGが運営するオンラインのスクールで、基金の横領が発覚して382人のCDM教師が辞職するという事件があった。
国民防衛隊(PDF)との関係
2021年5月5日、NUGは軍事政権に対する武力革命を開始するための武装勢力として「国民防衛隊(PDF)」の結成を発表した。これは各地に勃興しつつあった無数の反政府武装勢力を事後承認し、新たに自主的にPDFの設立を促すもので、自前の軍隊として各PDFを指揮下に置きつつ、各少数民族武装勢力と協力して軍政を倒すというのが、基本方針だった。なおこの際、各PDFと各少数民族武装勢力を合わせた「連邦民主軍」(Federal Democratic Armed Force)を創設するという構想が発表されたが、2024年8月現在実現していない。
ただ資金不足からNUGの各PDFに対する資金援助・軍事援助は不十分であり、各PDFは住民の寄付、バイト、私物の売却などで独自に資金調達する必要に迫られており、兵器不足から、せっかくの新兵も面倒を看きれずに追い返しており、実際に戦闘に従事しているのはほんのわずかで、戦闘ではPDFは常に劣勢で、地雷を設置してすぐに退却しているだけだったのだという。またNUG指揮下のPDFは内務大臣のルイン・コー・ラッが私物化しているとも批判されている。このような事情からPDFの中には、兵器を供給する能力があり、戦闘経験も十分な少数民族武装勢力の指揮下に入るグループもある。
また殺人、強姦、強盗などPDFによる凶悪犯罪が頻発しているが、大統領代行のドゥワ・ラシ・ラーは「犠牲者は軍のスパイ」「我々の政策を破壊している」と言い訳に終始するだけで、これに適切に対処しておらず、NUGが設置したPDFの監督機関・人民管理チーム(PAT)も機能していない。2024年5月には、あらためてPDFの人権侵害に対応する部隊・SSTF(Security and Special Task Force)が結成されたが、NUGの指揮下にないPDFはこれに猛反発した。
2024年末から2025年初頭にかけて、シャン州南部国民防衛隊(SSPDF)の第1005大隊、シャン州南部革命青年(SSRY)の第1008大隊、ガロン(“Galone)部隊、ホワイトタイガー部隊、ガンガウ(Gangaw)国民防衛隊などPDFがNUGの指揮下から離脱する事態が生じる。その理由について、識者は「NUGは春の革命の支柱となるどころか、障害物になってしまった。革命を推進するのに苦戦し、資金を誤って配分し、必要なところに財政支援を提供できていない。彼らは省庁を37に拡大し、最前線の兵士ではなく亡命者の支援に資源を浪費した。今、戦闘が激化する中、エーヤワーディーやマンダレーでの重要な攻勢に使える資金は残っていない。だからこそ(NUG)国防省傘下の多くの大隊が撤退したのだ」と語っている。
少数民族武装勢力との関係
前述したように、各PDFを指揮下に置きつつ、各少数民族武装勢力と協力して軍政を倒すというのがNUG基本方針だが、少数民族武装勢力の第一の関心事は自分たちの領土を確保することであり、NUGとは目的を違えていて、その連携は限界があると指摘されている。
2021年6月1日、チン民族戦線(CNA)が少数民族武装勢力として初めてNUGと同盟関係を結んだが、2024年8月現在、NUGと正式に同盟関係を結んだのはこのCNAだけである。2022年4月には、NUGはカヤー州に自治組織を立ち上げようとしたが、同州のカレンニー民族進歩党(KNPP)が猛反発し、撤回に追い込まれた。
2023年10月27日には、アラカン軍(AA)、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)、タアン民族解放軍(TNLA)からなる三兄弟同盟は1027作戦と名付けられた大規模な攻勢をシャン州北部で行い、広範な地域を支配下に収めた。NUGはこれを三兄弟同盟との協力の成果だと誇ったが、作戦実行中、指導敵役割を果たしたのは少数民族武装勢力であり、PDFがその指揮下で活動していたにすぎず、NUGの存在感は終始薄かったと指摘されている。実際、2024年1月12日に中国の仲介で国軍と三兄弟同盟との間で停戦合意が結ばれた際にはNUGの代表団は出席しなかった。また同年1月31日にNUGが発表したクーデター3周年の声明に連署したのは、カレン民族同盟(KNU)、カレンニー民族進歩党(KNPP)、チン民族戦線(CNF)の3つの武装勢力だけで、中国の影響下にあると言われる有力少数民族武装勢力の同盟・連邦政治交渉協議委員会(FPNCC)のメンバーの名前はなかった(ただし、翌月12日の連邦記念日に際し、FPNCCメンバーのシャン州進歩党とカチン独立機構はチン民族戦線と連名でNUGに対して祝電を送っている)。
同年5月、国軍とアラカン軍(AA)との戦闘が続くラカイン州において、アラカン軍(AA)によるロヒンギャ虐殺の事実が明るみに出たが、NUGは表立ってこれを非難せず、「NUGは現場を知らない」などと疑問を呈する声が上がった。なおアラカン軍(AA)のリーダー・トゥワンムラッナインは東京新聞のインタビューに答え、ロヒンギャ虐殺の事実を否定するとともに、NUGの傘下に入るつもりはないと明言した。さらにNUGに対し、ラカイン情勢に介入しないよう要請している。
2024年7月、元政治家のニャンリンは『イラワジ』上で「クーデターから3年経過したが、ますます多くの武装勢力がNUGから離脱しており、 NUGは各少数民族武装勢力の領土に国防省の事務所を設けているが、各武装勢力はほとんどこれに関与していない」と意見を述べている。
2024年9月4日、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)は(1)MNDAAは独立国家を追求するのではなく、自治区を維持する意向である(2)MNDAAはNUGとのいかなる連携も否定し、マンダレー、タウンジーへの攻撃を行わない(3)中国政府の和平イニシアティブに従い、政治的手段で問題を解決するという内容の声明を発表した。件の声明は即日削除されたが、その後、19日に再発表した。これに対してNUGも同日、9つの組織と連名で軍政を打倒した後、連邦民主連合国家を樹立する決意を再確認する共同宣言に発表した。署名したのは、カレン民族同盟(KNU)、カレンニー民族進歩党(KNPP)、チン民族戦線(CNF)、カレンニー州諮問評議会(KSCC)、パオ民族連邦評議会(PNFC)、新モン州党・反軍政(NMSP‐AD)、モン州連邦評議会(MSFC)、タアン政治諮問委員会(TPCC)、ビルマ女性連盟(WLB)である。
ロヒンギャとの関係
前述したように、NUGの閣僚には少数民族出身の閣僚が多数いるが、彼らは名目上の存在で実権がなく、NLD出身者が幅を利かせていると指摘されている。またNLD出身のNUG幹部は2017年のロヒンギャ危機の責任を認めておらず、過去の犯罪の清算が必要とも指摘されている。2024年11月時点で人道・災害対策大臣を務めるウィン・ミャッ・エーは、2017年のロヒンギャ危機の際に「ロヒンギャが自らの家を焼き払っている」と非難した人物である。
2021年6月3日、NUGはロヒンギャに市民権を付与するという声明を発表したが、この市民権の内容は不明であり、ロヒンギャの識者の間からも苦し紛れの策ではないかという疑義が呈された。2023年7月、ロヒンギャ男性のアウン・チョー・モーが人権省の副大臣に任命された。しかし同年8月に発表されたロヒンギャをミャンマー国民と認める声明のミャンマー語版では、ロヒンギャをミャンマーの先住民(Taingyintha)と言及することは避けられた。2024年3月には、NUGラジオがロヒンギャを「ベンガリー」呼ばわりし、批判を受けた後も「最近軍事訓練を受けた人々」としか訂正せず、ロヒンギャの名称を使わなかったという事態が生じ、ロヒンギャに市民権を認めるとした方針と矛盾するのではないかと批判された。また同年4月頃、アラカン軍によるロヒンギャ虐殺の実態が明らかになり、これに対してNUGは声明を発表したが、それはアラカン軍ではなく、国軍だけがロヒンギャを弾圧しているという実態とかけ離れたものだった。情報筋は「アラカン軍がこうしたこと(ロヒンギャ弾圧)を行っていると示唆することは、革命期に少数民族武装勢力を怒らせ、一部のメンバーを不快にさせる可能性がある」「革命期に少数民族武装勢力を同盟者として頼りにしてきたことが、この問題について声を上げにくい原因となっている」と述べている。オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のアナリスト・ネイサン・ルーザーは「NUGがこれらの残虐行為(アラカン軍のロヒンギャ虐殺)に対して沈黙し、無視し、共謀していることは、ビルマ人の権利と尊厳に対する NUG の取り組みに明らかな限界があることを証明している」「NUGが結成した連合軍の下で犯された過去数か月間の残虐行為は、同時期に彼らが現実政治的に得た軍事的利益よりも外交的に多くの損失をもたらしたとさえ言いたい」と手厳しくNUGを批判している。
資金調達
NUGは、武装闘争の資金を調達するために、在外ミャンマー人からの寄付の他、仮想通貨、国債、宝くじなどを発行し(その後、国債は発行停止)、同組織によれば、2023年1月までに1億ドルを調達したとされる。しかしこれは第三者の検証を得ていない自己申告であり、2022年7月の時点では寄付金額は減少傾向と伝えられている。
ミャンマー軍関係者の蓄財した資産の売却も、資金源の1つとなっており、ヤンゴンにあるミンアウンフラインの豪邸を1千万アメリカドルで売却した他、2022年現在ではその他の軍関係者により不当に入手された資産の売却も計画されている。一方で、スーチーの邸宅を国の文化遺産に指定してその売買を禁止したりもしているが、いずれにせよ、NUGはこれらの資産を管理しているわけではないので、募金集めの名目にすぎないと思われる。
その一方で、ミャンマー国内の企業に納税を求めたことが、実質二重課税であり、国民生活を苦しくするだけだと批判を浴びたり、クーデター後に認可された投資の中止を要請し、要請に従わなければ企業名・氏名を公表すると脅迫したり、実効性に欠ける政策も散見される。
外交
NUGは結成当初から積極的に外交政策を展開。当初は、チン族の医師・ササが、NUGのスポークスマンとして注目を浴びていたが、次第にその見識に疑問符が付く発言が多々見られるようになり、2021年9月、身分不明のアメリカ人の武器製造セミナーに参加していた事実が暴露されるに及び(記事を発表しようとすると、ササは法的手段をちらつかせたのだという)、その存在感は薄れていった。現在、NUGのスポークスマンを担っているのは外務相のジンマーアウンである。
NNUGは外国から正式に国家としての承認を求めているが、2024年8月現在、NUGを正式なミャンマー政府と認めたのは東ティモールだけで、独自のミャンマー国民に対する海外就労許可証を発行したものの、どこの国にも認められず発行中止に追いこまれるようなこともあった。またアメリカ政府に凍結した国軍関係者の資産を提供するように求めたが、これも拒否され、2022年12月にはミャンマーの民主派支援を内容とするビルマ法がアメリカで成立したが、結局、アメリカ政府が行ったのは国際機関を通じた人道支援のみだった。国際社会がNUGを承認しない理由としては、①国土を実効支配してない②ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権のようなリーダーがいない③PDFによる凶悪犯罪が横行しており、統治能力が疑問視されている④そもそも武力闘争していること自体が問題など、さまざまな要因が挙げられている。特にアメリカがNUGを支援しないのは、ミャンマーの内戦がロシアと違って安全保障上の脅威ではないため優先順位が低いからであり、イギリス外交筋は「 ミャンマーへの兵器の流入を増やすことは、死傷者や避難民を増やし、悲惨な人道的状況を招くだけだ」とまで述べているのだという。
2023年11月、NUG外相・ジンマーアウンが来日した。ミャンマーの民主化を支援する議員連盟所属議員や在日ミャンマー人の民主化運動家たちと交流を持ったが、日本の外務省関係者とは非公式な会合しか持てなかった。ただ、2024年1月23日、日本労働組合総連合会が外務省に対して、ILO総会にNUGがミャンマー政府として参加できるようにするため、NUGが国連で承認されることを支持するよう要請、同年5月にはNUGとNUGのクーデター3周年の声明に連署したカレン民族同盟(KNU)、カレンニー民族進歩党(KNPP)、チン民族戦線(CNF)の代表団が訪日し、高村正大外務大臣政務官との面会が実現するなど一定の成果は見られた 。
2024年のNUGの新年の挨拶は、①ミャンマーと中国の歴史的繋がりを認識する②1つの中国政策を支持する③2021年のクーデター前の合意を尊重する④犯罪組織根絶のために中国と協力するというもので、これまでも欧米重視策からの転換が窺えた。しかし、中国政府は国軍と連邦政治交渉協議委員会(FPNCC)に所属する少数民族武装勢力だけを交渉相手としていて、NUGとは公式な交渉を行なっていない。1027作戦の際には、中国政府は三兄弟同盟にNUGに近づくなと警告していたと伝えられている。
閣僚
政府の大臣
脚注
注釈
出典
関連項目
- ソー・バ・フラ・テイン - 初代駐日代表
- ヤン・ナイン・トゥン - 初代韓国代表部特使
外部リンク
- 国民統一政府公式サイト




